3月7日(日)佐久勤労者福祉センター、メインホールで開催された
長野県接骨医学会で
「膝関節痛に対するコンプレッションストレッチングの直後効果」と
題して、
共同研究者の原友仁が発表しました。
膝関節痛に対するコンプレッションストレッチングの直後効果
いいだ整骨院 原友仁 原幸夫
はじめに
ストレッチングの筋緊張軽減の効果をより上げる方法として、トレーニングバンドを巻いて圧迫を加えて行うストレッチを考案しコンプレッションストレッチングと名づけた。
膝関節痛を訴える患者にコンプレッションストレッチングを行った直後効果について報告する。
方法
膝関節の痛みを主訴とした患者10名に、セラバンド(緑)を足の甲から、大腿部中央部まで巻き上げておき、下腿三頭筋のストレッチを2〜3分間と椅子座位で膝の無負荷の屈伸運動を20回行って術前、術後をVASで比較した。
症例提示
症例1
O・M(女性/84歳)
主訴 左膝関節痛及び腫脹
症状 下肢はO脚を呈し、伸展制限165度、膝蓋上包に腫脹を認める(膝蓋跳動−)運動開始時痛が強く、起床時トイレの往復にハイハイで移動する。午前中は足を引きずるように歩く。
術後の歩行時痛が10→7に軽減した。歩容が少し改善した。
症例2
M・T(女性/76歳)
主訴 左膝関節痛
症状 伸展制限175度、腫脹軽度、屈伸時痛がある。
術後に屈伸時痛が10→5に軽減した。
症例3
T・H(男性/75歳)
主訴 右膝関節歩行時痛。正座が出来ない。
症状 痛みがあるのに正座の練習と歩行練習して疼痛増悪。伸展制限180度(健側は180度を超えて過伸展が可能)、腫脹軽度、伸展を強制すると疼痛が出現する。
術後に歩行痛が10→4に軽減した。
症例4
M・M(女性/35歳)
十字靭帯損傷の再建手術後6カ月。歩行時痛があり、時に自発痛がある。腫脹があり。膝蓋跳動+。引き出し徴候+。伸展制限170度。
術後に歩行時痛が10→5に軽減した。
症例5
I・I(男性/12歳)
主訴 左膝関節のランニング時の痛み
症状 サッカーの練習中に痛みを訴えるようになった。関節可動域、伸展時180度で軽度の伸展制限が認められる。膝関節を強制的に伸展すると膝窩部に痛みを訴える。
術後に伸展強制時の痛みが10→5に軽減した。
症例6
K・I(女性/42歳)
主訴 起床して歩き始める時に左膝が痛い
症状 膝関節伸展を強制すると痛む。軽度伸展制限(180度)。健側は−5度の過伸展が可能。
術後に伸展強制時の痛みが10→1に軽減した。伸展制限が無くなり健側と同様の可動域になる。下肢全体が軽く感じられ、膝の動きが良いと言う。
症例7
H・H(女性/75歳)
主訴 歩行時痛、伸展制限
症状 膝関節伸展制限(170度)。大腿部全体の筋緊張著明。大腿部外側のしびれ感を訴える。下腿部浮腫を認める。屈伸運動で痛みを訴える。
術後に屈伸運動時の痛みが10→4に軽減した。大腿部の筋緊張が低下し、伸展制限が軽度2〜3度改善された。足が軽く感じられ大腿部外側のしびれ感も軽い感じと話す。
症例8
K・H(男性/9歳)
主訴 ランニング時の膝蓋腱部の痛み
症状 膝蓋腱の圧痛、立位での膝屈伸時の膝蓋腱の疼痛を訴える。
術後 立位での膝屈伸時の疼痛が10→3に軽減、圧痛も10→2に軽減した。
症例9
K・S(女性/4歳)
主訴 右膝伸展強制時の疼痛。
症状 2ヶ月前に大腿骨下部の不全骨折。伸展制限170度。他動的伸展180度で痛みを訴える。
術後 他動的伸展185度での痛み10→2に軽減。
症例10
M・T(女性/90歳)
主訴 左膝関節伸展時痛及び歩行時痛
症状 関節の腫脹軽度。歩行開始時痛。
術後 伸展時痛10→3 歩行時痛10→4に軽減した。
結果
すべての症例に術後、疼痛軽減が認められた。患者は施術直後に痛みが軽度になり、足が軽いという。他覚的にも筋緊張が緩むのが判る。
コンプレッションストレッチングは膝関節痛の治療の補助として有効と考える。
まとめ
コンプレッションストレッチングは筋緊張緩解の効果が高い。関節痛の因子として筋緊張が推察されることから筋緊張の緩解が関節痛を軽快すると考えられる。また、筋緊張の緩解は関節可動域の拡大ももたらすと考えられる。
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