中国鍼(はり)治療で完治した突発性難聴の1症例
1、はじめに
突発性難聴は原因不明で予後も不良であると言われる。その治療を行う機会をえて、良好な経過を診たので報告する。
2、症例
初診平成3年7月9日、M.S、女性、37歳、主婦。
3、主訴
左難聴、耳鳴
4、現病歴
平成3年6月3日車を運転していて降りようとしたとき耳鳴、
左耳が聞こえない事に気が付いた。
めまいはなかった。
6月4日耳鼻科受診し突発性難聴と言われた。
7日、12日、19日受診。
薬を飲むと気持ちが悪くなるためと
糖尿病でインシュリン注射をしているため不安があり、
10日より服薬は中止している。
難聴、耳鳴が改善しないため当院を受診した。
5、症状
左耳は全く聞こえない。
左に受話器を当てると全く聞き取れない。
左耳が詰まった感じ。
耳鳴は昼間のさわがしいところでも聞こえる。
蝉が鳴くような音。
リンネ陽性、ウェーバー健側に偏する。
6、既往歴
糖尿病があり、インシュリン注射をしている。
7、家族歴
特記すべきものなし。
8、要約
突然の難聴の発生、原因不明、耳鳴を伴うこと、テストの結果、
感音難聴であろうと思われることを勘案すると
突発性難聴であろうと推察される。
9、治療方針
内耳の血行を促進する目的で 風地、聴宮、曲池、合谷を選穴。
また大極治療として腎ゆ、足三里を選んだ。
10、経過
7月9日初診。
風ー聴宮、合谷ー曲池で通電、腎ゆ、足三里置鍼10分。
用鍼は中国鍼(長さ77mm,直径0.37mm)。
7月11日電話が聞こえるようになった、
耳鳴が軽くなったと患者が言う。
耳鼻科での聴力検査を勧める。治療同前。
7月15日右と同じに聞こえる様になり耳鳴が消えたと患者が言う。
治療同前。治療を打ち切る。
11、考察
突発性難聴の聴力の回復は発病後すぐ始まり
2週間くらいが最も進み、1ー2カ月は少しづつ進み、
それ以後は聴力は固定し陳旧化すると言われている。
この症例では35日経過後来院、
その間症状改善が無いにも拘らず
経過は良好で自覚的に症状は完全に改善された。
選穴、刺激量が適切であったかは不明であるが
経過からみると良かったのではないかと思う。
12、参考文献
1)鈴木篤郎:耳鼻咽喉科学入門、35、南
山堂、1974
2)石井哲夫:耳・鼻・のどの病気、51ー
52、創元社、昭和55
3)田崎義昭ほか:ベッドサイドの神経の診
かた、191、南山堂、1978
4)東針法研究会:針灸配穴事典、158ー
163、 原書店、1985
- 2009.10.13 Tuesday
- ◎鍼灸・針灸・はり・きゅう・東洋医学、中国医学、中国はり・いいだ鍼灸院
- 17:42
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